無期転換 Q&A

「不更新条項」とは・・

 

 

「不更新条項」とは・・ 有期雇用契約(たとえば1年の雇用契約)で、これまで契約が更新されてきたのに、突然、契約更新時に「次回の契約更新はしない」「この契約で終了とする」という定めが入るものをいいます。

 


「不更新条項」のある契約書にサインしろと言われた!

これまで何年にもわたり1年間の雇用契約が更新されてきましたが,今回の契約更新時に人事部の方から渡された契約書をみると,「次年度は更新せず,本契約をもって終了とする」と書かれてありました。

 

 過去の契約書を確認すると、「契約更新をする可能性がある」と記載されていました。

人事部の方からは、この新しい契約書にサインしないと今回の契約を更新しないと言われています。

サインしなければならないのでしょうか。


 一旦、持ち帰って、弁護士・労働組合に相談しましょう!

サインすることは避けた方が良いです。

このような次回は更新しないという条項を「不更新条項」といいます。

特に問題がなければ働き続けられると言われたり、更新を繰り返してきたような場合には、契約期間が満了した後も、労働者の雇用継続の期待が保護され、労働者が希望する以上、会社(使用者)は次の期間の契約をしなければなりません(以下では、このような労働者を念頭に置きます)

 

しかし、「不更新条項」のある契約書にサインしてしまうと、その次の次回の契約更新がなされず、そのことに不満があったとしても、会社側からは「契約更新はないという契約書に自分がサインしたではないか」と言われかねません。

今後も次回の契約更新がされないことに納得できず今後もその会社で働き続けることを希望されている場合には、「不更新条項」が付された契約書にはサインせず、いったん持ち帰って弁護士・労働組合(職場に労働組合がない場合であっても、職種別・地域別等の個人加盟の労働組合があります)に相談してください。

同僚など他の労働者と相談や情報交換することも良いでしょう。



 「不更新条項」のない契約書にして欲しい!

では具体的には、「不更新条項」に納得ができない場合は,

どうすればよいでしょうか。


 従前と同じ契約書にするよう求めたり、不更新条項を削除するよう求めたりしましょう。労働組合が団体交渉でこれらの要求をする場合、会社がその交渉を拒否することは不当労働行為となります。

 

また、会社が削除などに応じない場合、「不更新条項」に納得がいっていないことを明示し、証拠に残しましょう。

これまでの事例では、例えば、「次年度は更新せず、本契約をもって終了とする」という「不更新条項」の部分を二重線で消して提出したり、契約書にサインをして人事部の方に渡す際に「不更新条項の部分は納得できません」という趣旨の別の文書を提出する。

(そのコピーや写真をとって手元においておく)という方法を取られた方もおられます。



契約書の変更・改変は認められないと言われた!

「次年度は更新せず、本契約をもって終了とする」という部分を二重線で消して契約書にサインして人事部の方に提出したら、

「このようなものは受け取れない」と突き返されました。

どうしたらよいでしょうか。


そんな契約書にはサインしないのも、一つの方法

労働契約は必ず契約書がなければいけないというわけではありません。

契約書にサインしないままで契約終了後も(なし崩し的に)働き続けることができれば、それはそれで良いのです。

 

ただ、「契約書にサインしないのなら辞めてもらう」と迫られることもあります。そのような場合、「自分はこの会社で継続して就労できるはずだ」という抗議し、抗議をしたという証拠(文書・メール・録音など)を残しましょう。会社がその抗議にも聞く耳を持たず、サインしないことを理由に本当に雇止めをしそうであれば、されそうであれば、早めに弁護士・労働組合に相談し、対応を協議しましょう。

(先ほど述べたとおり、こうした契約書が出てきた段階で、相談することがベストです)



 「不更新条項」があるかどうかが判らない!

契約書をみても、細かな内容が書いてあり、何が問題なのかが分かりませんし、「不更新条項」がどれかも判りません。

契約更新のときに気をつけた方が良いことはありますか。


前の契約書と見比べて、その違いを確認する!

契約書はサインする前にそのまずは契約書の中身をよく確認することが大切で、これは労働契約の場合も同じです。

労働契約の場合、特に大切なのは、これまでの契約書と比較して違っているところがあるかないかです。チェックすることが大事です。

 

会社が、「基本的にはこれまでと変わりない」などと言って、こっそりこれまでの契約書にはなかった「不更新条項」を忍ばせたり、重要な労働条件が不利益に変更されたりしている場合もあり、それを知らずにサインしてしまったという事例もありますので、特に注意が必要です。

 

違いがある場合は、勝手に思い込んだり、自分で良いように解釈したりせず、とりあえず弁護士や労働組合に相談して、確認してみましょう。

 

なお、また、契約更新時の面談でのやりとりは、言った言わないの話しになる可能性がありますので、録音をしておいた方が良いです。

裁判等になれば、決定的な証拠になることもあります。



その場で契約書にサインしろと言われた!

人事部の方から「不更新条項」が付いた契約書にサインするように言われたので、家に持って帰ると言いましたが、今この場でサインするように言われました。

どうしたらよいでしょうか。


 何とか、その場を離れましょう! 

サインせざるを得ない場合でも、意思に反することを述べて、証拠を残しましょう!

まずはその場を離れましょう。

 

 契約は、両当事者の自由な意思に基づいて行われるべきものであり、十分に考える時間も与えない、誰かに相談するなどして内容を理解する間も与えず、サインを迫るというのは不当です。

特に、会社が「不更新条項」を入れるなどしてきた場合には、考える十分な時間が欲しいと言い、そう言ったことを証拠(録音や面談録の作成など)に残しましょう。

 

 それでも、会社の担当者が契約書にその場でのサインを迫る場合には、やむを得ませんから、

例えば「おなかが痛い」、「トイレに行きたい」とでも言って、とにかくその場を離れ、トイレ等に行きましょう。

その上でトイレ等で家族に電話で相談したり、弁護士・労働組合が開催するホットライン相談に電話するのも一つの方法です。

 

 また、結局、契約書にサインしないと帰れない(雇止めになってしまう)、契約せざるをえないにしてもような場合には、スマホの録音機能などを用いて元の場所に戻り、「納得いきませんが今日サインしないと帰れないということですので、仕方なくサインします」等言っておくことも、現実的な手段といえます。



「不更新条項」付の契約書にサインしないことを理由に雇止めされた!

「不更新条項」の付された契約書にはサインできませんと言ったところ、人事部の方から「では今回で雇止めにします」と言われました。どうしたらよいでしょうか。


 雇止めは許されません!

先ほど述べたように、雇用継続の期待を有する労働者について、「不更新条項」の付いた契約を拒否したことを理由とする雇止めは許されません。

もともとこのような労働者については、労働者が希望する限り、会社は契約を更新しなければならないのですから、会社が一方的に更新しないと言ったからといって、それが通る道理はないのです。

 

 「不更新条項の付いた契約を拒否したことを理由に雇止めされたこと」を証拠化(たとえば、会社からそう言われたことについて録音する等)することが大事です。

決して泣き寝入りせず、弁護士・労働組合に早めに相談しましょう。



 「不更新条項」にサインしてしまった!

すでに「不更新条項」の付された契約書にサインしてしまいました。次回の更新は諦めるしかないのでしょうか。


 決して諦める必要はありません!

契約の内容がよく判らずにサインしてしまった場合、自由な意思に基づいてサインしたとは言えませんし、会社がこっそり「不更新条項」を忍ばせていたのであれば、それはだまし討ちですから、それが契約の内容ということにはなりません。

 

 できるだけ早く「そんな説明は聞いていない」、「不更新条項付きの契約書ということはわからなかった」、「不更新条項付きの契約書であることがわかっていればサインはしなかった」、「不更新条項はサインしたときから納得できていない」と言い、それを書面で出すなどして証拠に残しましょう。

書面で出す方が良いでしょう。一人で言うのが難しければ、弁護士・労働組合に相談し、書面を出してもらいましょう。

 

 また、不更新条項の削除を求めたり、弁護士・労働組合に相談するための時間を求めたりしているのに、「これにサインしなければ即刻雇止めする」などと脅されてサインせざるを得なかった場合も、それは自由な意思に基づいてサインをしたとは言えませんので、団体交渉や裁判で争う余地は十分にあります。

 

簡単に諦めず、まずは労働組合・弁護士に相談しましょう。



民主法律協会所属の弁護士監修によるQ&Aです。

 

安心して、ご自身の契約で活用してください。

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